ニッポンチャレンジドアスリート

スポーツに打ち込み、磨き抜かれた技で、観る者を感動・興奮させるアスリートたち。アスリートの中には、障がいを持ちながら、国際舞台を目指している者たちもいる。そんなアスリートたちの戦い続ける素顔、軌跡、そして、支える人たちにも迫る。

2016.12.26
【別所キミヱ】リオパラリンピック・車いす卓球日本代表。アテネから4大会連続、68歳でリオに出場。「バタフライマダム」の愛称で人気。



■夫も息子二人も、スポーツが大好きだったという別所選手。だが39歳のとき、夫に突然先立たれ、別所選手にも病魔が襲う。やがて病名が判明。「仙骨巨細胞腫」骨盤にできた、ガンの一種だった。再発・大手術を乗り越え、車いすで新たな人生を歩んでいこうと決意。そんなとき出会ったのが、卓球だった。

「障がい者の方が遊びでやってたんです、体育館で。毎週水曜日に、抱えてきた病院のふつうの車いすで、つなぎ着てね。卓球の格好ではないですよ。そこではじめてました。やっぱり今、ビックリしますもん、友だち。「ようパラリンピックに出たなぁ」って、今でも、それで大笑いなんですよね」

■大会で毎回勝ち進んでいくうちに、勝つことの喜びを感じるようになった別所選手。負けず嫌いの性格もあって、練習もだんだんハードになっていった。

「コーチもいないから、ふつうのママさんの教室に行ってるんですけど。やはり車いすとかで、ラリーも続かないので。下手だったら相手にしてもらえないじゃないですか。だから家で、カネのハンガーに糸をつけて、そこにピン球を巻いて、ポンポンポンポン打ってたんですよ。そしたらピン球がポーンと当たって、天井に当たって。子どもにね『おっかあ、またそこで卓球しとんのやろ』とか言われて。ボーンと打ったら、ポーンと天井に当たって・・・。これはちょっとアカンなと思い出して。それだったら廊下でしようと思って、斜めにしてね。そこで回転をかけたりして。どういう回転がいいのかな、とか・・・」

■努力が実り、2004年、別所選手はついにアテネパラリンピック出場を果たす。目標は予選突破だったが、残念ながら予選敗退。特に、卓球王国・中国の強さには圧倒されたが、得たものも大きかった。

「考え方も変わったし、皆さんから『すごいな、パラリンピック行って』と言われることも多かったです。でもそうかといって私が、えらくなったとか、そういう意味じゃないんですよ。パラリンピックのことをもっと皆さんに知ってほしいな、と考えたのが、このアテネ(がきっかけ)です。『いろんな苦労をしてますよ』ということで、いろんな講演をしたのも、この時期からなんです」

■4年後の2008年、別所選手は北京パラリンピックに出場。このとき還暦を過ぎていた。

「ヨルダンの選手と、すごくいい試合をして、その必死さでね、国民の人がいっぱい応援してくださるんですよ、中国の人が。『ジャパン、ジャパン』とか言って」

■北京パラリンピックでは5位。メダルまであと一歩だった。

「メダルは獲れなかったんですけど、やっぱり一生懸命やっているプレーがね、その人たちの心に響いたんだなと思って。負けてこんなにいい思いをしたのは、北京かなと思いますね。それから、卓球への思いがまた熱くなるわけですよね。その一勝は重いですね、このパラの一勝は・・・なかなか獲れない」

■64歳で、ロンドンパラリンピックに出場。「今度こそメダルを」という思いで臨んだが、予選リーグで敗退し、またも5位。結果は残念だったが、何より嬉しかったことがある。観客席からの熱い声援だ。

「もちろん多いほうがいいですよね。やりがいもありますし。ロンドンの方ってやっぱり応援が、すごい賑やかでガーというんではなくて、拍手とワーッという声が多かったですね。いっぱいでしたもの。整理券配るのがいっぱいいっぱいで。チケットも全部完売したって聞いてますしね」

■ロンドンパラリンピックが終わった時点では白紙だった、リオへの出場。だが、周りの声が、後押しした。2016年9月、別所選手は68歳にして、4度目となるパラリンピック出場を果たす。

「68歳が、ブレイクしましたもんね。こんなにも歓迎してもらったら、生きてて良かったと思いますよ、本当に。今回、チョウチョをいろんなメディアで報道してくださって、今まで行った大会の中で最高でしたね」

■2020年、72歳で、東京パラリンピックを迎える別所選手。5大会連続出場、そして悲願のメダル獲得を期待する声は多いが・・・。
 
「東京だよおっかさん、じゃないですけど、東京は謎ですね。環境も悪いし、練習のパートナーと、費用もそうだし、もっともと練習しなくちゃいけないし。今、私、正直、手を痛めてるんですよね。手術しないといけないんで。全部完治して、いろんなことを考えていかないと。今では無理かなという感じはしますよね、まだまだ」

「卓球はしますよ。どんどん活動もするし。今、私、ここで「東京行きます」っていうのは、あまりにも・・・。ランキングをとる難しさとかあるから、中途半端なことは言えないので。行くときは『行きます』ってハッキリいいますし。今はそういう状態ではないので、謎ですよね、今は」

別所選手に、将来の夢を聞いてみた。

「健康には気をつけながら、卓球はずっと続けていって、将来の夢は、卓球場が欲しいな、と思ってるんです。今あちこち行ってるけど、自分の卓球場に、台が2台くらいあって。そこには車椅子の人が来て、1泊ぐらい泊まれて、トイレはバリアフリーで、車も止められて、そこにコーチを呼んで卓球をする、というような話が実現したらいいなと思ってます」

※放送内容は、上のYouTubeの再生ボタンを押すとお聴きになれます。
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次のゲスト予定

10月23日(月)〜27日(金)、10月30日(月)〜11月2日(木)の2週間は、パラ馬術・宮路満英(みやじ・みつひで)選手と、コーラーの裕美子(ゆみこ)さんが夫婦で登場します。
満英選手は、1957年、鹿児島県生まれの59歳。10月29日に還暦を迎えます。JRAの調教助手として、海外のG1レースを勝ったシーキングザパールなど、数々の名馬の調教に携わりましたが、2005年、仕事中に脳卒中で倒れ、右半身まひなど重い後遺症が残りました。2007年にJRAを退職。その後パラ馬術を始めます。
満英選手は記憶障がいがあり、指定されたコースがよく覚えられないため、妻・裕美子さんが「コーラー」と呼ばれるガイド役を務め、声でコースを指示します。夫婦二人三脚で、昨年のリオパラリンピックにも出場。3年後の東京パラリンピックを目指しています。
インタビューも、満英選手の記憶を補うため夫婦一緒に受けられることが多く、今回は特別にお二人での出演となりました。リハビリを経て再び馬に乗ったときの喜び、夫婦で戦うことになった経緯、馬とのコミュニケーション、リオでの思い出、夫婦の絆、これからの夢…など、まるで夫婦漫才を聞いているような二人のお話を2週にわたってお楽しみください。

*11/3(金)は、祝日のため放送はお休みです。