ニッポンチャレンジドアスリート

スポーツに打ち込み、磨き抜かれた技で、観る者を感動・興奮させるアスリートたち。アスリートの中には、障がいを持ちながら、国際舞台を目指している者たちもいる。そんなアスリートたちの戦い続ける素顔、軌跡、そして、支える人たちにも迫る。

2016.01.11
【山本篤】北京パラリンピック・走り幅跳び銀メダリスト。2015年世界選手権で6m11を跳び大会2連覇。リオで金メダルを目指す。



◼中学・高校時代は、バレーボールの選手でアタッカーとして活躍していた山本選手。しかし高校生のとき、バイク事故のため左足の腿から先を失った。切断手術は一度では済まなかった。

「足の切断手術は、全部で3回しました。膝下の切断の手術から、膝上の切断の手術をするまで2週間あったんですが、そのときが一番悩みましたし『なんで自分がこうなってしまうんだろう』と考えました。手術室に入っていくときにドクターに『足を切断してもスノーボードはできますか?』という質問をしたんですね。2週間、考えに考えて出た結論が『やっぱり自分は、スポーツが、スノーボードがしたい」という結論でした。そこからスノーボードをするためにリハビリを頑張るという生活に入りました』

■その後、山本選手は、義足や義手を作る「義肢装具士」を目指すため専門学校に進学。そこでスポーツ用の義足に初めて出逢い、衝撃を受けた。

「『すごくかっこいいな』と思ったんですね。やっぱり陸上をするためだけに作られた義足でしたので、ものすごくかっこよく感じて『これを使えばぼくも走れるのか』と思って、走り始めたのがきっかけですね。一番最初につけて走ったのは、19歳の7月です。そのときには、砂利で100メートルも走ってないんですけど、ものすごく飛び跳ねられる義足だ、というのはわかりました」

◼本格的に陸上を始めた翌年、2003年に100mの日本記録を更新、2004年のアテネパラリンピック出場に自信を持っていたが、選考会で標準記録を突破できなかった山本選手。その後、義肢装具士の国家資格も取り、義足を作る会社に就職も決まっていたが、大阪体育大学への進学を選び、切磋琢磨の日々を過ごす。やがて努力が実り、山本は2008年、念願の北京パラリンピックに出場。100mで5位に入賞、さらに得意の走り幅跳びで、なんと銀メダルを獲得した。

「これだけ大きな競技場でこれだけ観客がいる中、走れるっていうのはもうしびれるくらい嬉しかったですね。100mが先にあって5位だったんですけど、記録を見るとすごく悪いんですよ。それで中1日あって、走り幅跳びがあったんですけど。これもけっこう苦労してですね、1本目、2本目とファールだったんです。『マジか、これ最悪だな』と」
「でも絶対記録さえ残せば、ちょっとくらい足が合ってなくても、とりあえずベスト8に残れるから、絶対にファールしないところで跳ぼうってスタートしたんですよね。そのときにラスト5歩ぐらいになると、だいたい合うか合わないかわかるんですけど、それで『あっ、これなら合うなと』思ったので、思い切りジャンプして飛び出したら、銀メダルを獲ることができました」

■大学卒業後、スズキに入社し、実業団・スズキ浜松アスリートクラブのメンバーになった山本選手。だがその後、会社に籍を置きながら、大阪体育大学の大学院に進学し「運動力学」を学んだ。「運動力学」とはどんな学問なのか?

「運動力学というのは、バイオメカニクスともいうんですけど、どのように動かしたら速く走れるか?というのを主に研究しています。ぼく自身は自分の走りをカメラで撮って、あとは地面反力を録って、筋電図を録って…と、いろんな方向からデータをとって、研究していきました」

■2014年、韓国のインチョンで行われたアジアパラ競技大会では、山本選手は100m・走り幅跳びでともに金メダルを獲得。さらに200mでも銀メダルに輝いた。さらにもう一つの金メダルを手にした。それは「リレー競技」。アンカーを務め、金メダルを獲得したのである。

「リレーは2005年からですね。ぼくは『もうアンカーしかやらない』っていって。目立ちたがり屋なので、最後のゴールテープを切るところをやりたいなと思って。あとは、大腿切断の義足ですので、なるべく直線で。そこが一番適任なのかなと思って走っています」
「インドネシアが2番手だったと思うんですけど、インドネシアの選手は、ぼくより障害がくて、100mのタイムも速い選手だったんですよ。多分ぼくの内側を走ってましたが、ずっと、後ろからの足音を聞きながら『絶対に逃げ切るんだ』っていう思いで、ゴールを突き抜けていきました。金メダルを獲ったときの嬉しさというのは、やっぱりアンカーが一番あると思いますし、『直線を一番速く走るんだ!』っていう気持ちでやっています」

■リレーのメンバーは、義手のランナー多川知希、義足の佐藤圭太、「義足のハイジャンパー」こと、走り高跳びの鈴木徹、そして山本選手。彼らは自分たちのことを、あえてこう呼んでいる…「チーム切断」。

「『チーム義足』とかにすると、多川選手が拗ねちゃうんですよね。『義足じゃない、ぼくは義手だ』って。LINEのグループがあって、いろんなたわいもない日常会話から、リレーのことまでやりとりしています」
「なるべく1〜2カ月に1回くらいは集まって、集まったら絶対リレーの練習をするという形で、けっこう仲良くなって、ものすごく集まる機会を増やしていくようになりました」
「ロンドンで4位、世界選手権で4位、2013年のフランスの世界選手権で0.2秒くらい足りなくて4位。2015年のドーハの世界選手権も0.2秒足りなくて4位なんです。ずっと4位なんですよ。『メダルを獲りたい、獲れる!』と思ってやってるんですけど。リオではぜひともメダルを獲りたいと思っています」

■山本選手はリオパラリンピックに向け、個人種目でも結果を出している。2015年10月にカタールのドーハで行われた世界選手権で、山本は大会新記録となる6m29を跳び、見事大会2連覇を達成した。

「世界大会2連覇をすると言って、しっかり達成できましたので、本当に満足のいく結果です。これでリオパラリンピックの出場権も獲得することができましたので、一安心という形です。『リオに出場するんだ』ではなくて『リオで金を獲るんだ』っていう気持ちでパラリンピックを目指せるっていうことで、ものすごく気持ちが楽になりました」
「ここからもう一歩、記録を伸ばしていかないと、金メダルは近くありません。『世代はまだ変えさせないぞ』っていう気持ちで、リオでは勝ちたいなと思っています」

※放送内容は、上のYouTubeの再生ボタンを押すとお聴きになれます。

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次のゲスト予定

10月23日(月)〜27日(金)、10月30日(月)〜11月2日(木)の2週間は、パラ馬術・宮路満英(みやじ・みつひで)選手と、コーラーの裕美子(ゆみこ)さんが夫婦で登場します。
満英選手は、1957年、鹿児島県生まれの59歳。10月29日に還暦を迎えます。JRAの調教助手として、海外のG1レースを勝ったシーキングザパールなど、数々の名馬の調教に携わりましたが、2005年、仕事中に脳卒中で倒れ、右半身まひなど重い後遺症が残りました。2007年にJRAを退職。その後パラ馬術を始めます。
満英選手は記憶障がいがあり、指定されたコースがよく覚えられないため、妻・裕美子さんが「コーラー」と呼ばれるガイド役を務め、声でコースを指示します。夫婦二人三脚で、昨年のリオパラリンピックにも出場。3年後の東京パラリンピックを目指しています。
インタビューも、満英選手の記憶を補うため夫婦一緒に受けられることが多く、今回は特別にお二人での出演となりました。リハビリを経て再び馬に乗ったときの喜び、夫婦で戦うことになった経緯、馬とのコミュニケーション、リオでの思い出、夫婦の絆、これからの夢…など、まるで夫婦漫才を聞いているような二人のお話を2週にわたってお楽しみください。

*11/3(金)は、祝日のため放送はお休みです。