ニッポンチャレンジドアスリート

スポーツに打ち込み、磨き抜かれた技で、観る者を感動・興奮させるアスリートたち。アスリートの中には、障がいを持ちながら、国際舞台を目指している者たちもいる。そんなアスリートたちの戦い続ける素顔、軌跡、そして、支える人たちにも迫る。

2015.08.09
【上山友裕】2011年よりパラアーチェリー選手に。今年は国際大会で初優勝、リオパラリンピックを目指すアーチェリー界期待の星。



■上山選手がアーチェリーと出逢ったのは、同志社大学在学中のこと。オリンピック選手を多数生んでいる名門でレギュラーとして活躍、室内のインカレにも出場した。アーチェリーを始めたきっかけは・・・

「それまでラグビー部で、男女が一緒にやるスポーツは初めてだったんです。まさに狙ったかのように、体験入部を担当した先輩がすごく美人で(笑)。そのまま僕が風船割りを決めたときに、その先輩に『わ、すごい!センスある!』と言われ、名前と学部と電話番号、もう逃げられない3点セットを渡して、そのまま入部することになりました」

■卒業後、上山選手は食品会社に就職したが、帰宅途中で突然原因不明の症状に襲われる。走ろうとしても足が全然ついてこない。そのうち松葉杖なしでは歩けない状況に。病院に行っても症状はなかなか改善せず辛い日々を送る中、上山選手はこんな誘いを受ける。「パラリンピックを目指してみないか?」

「卒業後もアーチェリーは趣味程度に続けていたんですが、練習場に行ったら、そこの管理人さんから『いまパラの世界がすごく高齢化が進んでいて、若い選手が入らない。ちょっと助けてやってくれないか?』と誘われて。それがパラアーチェリーとの最初の出逢いです」

■2011年春から、本格的にパラアーチェリー選手としての活動を始めた上山選手。一般のアーチェリーとの違いとは?

「僕の中では全然違いというのはなくて、『実際に撃っている人が立って撃っているか、義足を付けて撃っているか』『座って撃っているか、車いすで撃っているか』これだけの違い。後はルールもすべて同じで、得点表記も一緒ですから。健常との差が少ないスポーツですね」

■本格的にパラアーチェリーに取り組むに当たって、上山選手は練習時間を増やすため、実家に「特訓場」を作ったという。

「大学のときに1時間以上かけて練習場まで通っていたんですが、近所に下宿している部員と、実家から通っている僕とでは練習時間の差がかなりあったんです。自分が練習したいときに弓を持って特訓できるように、実家のガレージに畳を5枚重ねて的を描き、特訓場を作りました。車を停めているので親には反対されましたが…」

■そんな特訓が実り、上山選手は2012年、ジャパンパラアーチェリー競技大会で優勝。翌2013年、全国身体障がい者アーチェリー選手権も制し国内で頂点に立った。次の目標は「世界」。余勢を駆って、上山選手はタイのバンコクで行われた世界選手権に出場。国際大会に初挑戦したが、世界の厚い壁に跳ね返されてしまった。

「やっぱり世界のレベルになってくると、日本のレベルはまだまだ低いんだなと感じましたし、自分がまったく通用しなかった、ということも痛感しました」
「このままじゃダメだと思って、優勝した選手に『どれぐらい練習してるんだ?』と聞いたら、『週に3日は練習できる』。当時の自分の環境ではそれだけ練習するのは絶対無理でしたし、自分で動いて、新しい環境を探すようになりました」

■上山選手は日本オリンピック・パラリンピック委員会が共同で進めているトップアスリートの就職支援制度「アスナビ」を利用。昨年春、現在所属する三菱電機に転職した。遠征費用の負担が減り、十分な練習時間も確保できるようになった上山選手は、今年4月、アメリカで行われた「AAEアリゾナカップ」に出場した。

「準決勝、決勝と全部アメリカの代表選手が相手でしたが、両方とも世界ランキング10位以内の強敵でした。でも自分としてはあまり気にせず、実際にアリゾナは風がけっこう吹いていたので『風を読んで相手に勝とう』という気でいました」

■その「風読み」が効を奏した。決勝は上山選手が7対3で圧勝。みごと金メダルに輝き、海外で初の栄冠をつかんだ。

「僕の方が相手の選手より環境を読み切っていた、というのが勝因ですね。相手は風を読まずに撃って、風に流されて右に大きく外した。僕は風の方向を計算して、わざと左を狙ったんです。そうしたら真ん中の方に当たっていって」
「自分が撃った後、相手が撃って優勝が決まるまでは本当にドキドキしました。決まった瞬間は「これで本当に終わりなのか?」という感じでしたね」

■次の目標はもちろん、来年行われるリオパラリンピック。メダルも十分期待されるが、まずは11月に行われるアジア選手権で2位以内に入り、リオへの切符を確保することが当面の目標だ。いま、どこに重点を置いてトレーニングをしているのか?

「いま一番力を入れているのは、筋力アップです。もう一つは、一年間を通じてかなり成績に波があるので、その波をなくすこと」
「一番いいときだと本当に、世界でも十分通用するような成績なんですが、一番悪いときだと、日本でも通用しないほどレベルが落ちてしまうことがあるんです。リオに出たとき一番低い状態だと、出るだけの選手で終わってしまう。そうならないよう、しっかり成績を安定させていきたいと思います」

■そんな上山選手を支えるのが、今年3月に結婚したばかりの幸美(ゆきみ)夫人。おととし健常者の大会に出場した際、サポート役を務めてくれたのが縁で交際を始め、ゴールインした。結婚の翌月に獲得した海外初タイトルは愛妻へのビッグプレゼントになったが、夫人からも嬉しいプレゼントがあったという。

「優勝して帰ったら、ケーキが待ってました(笑)」
「付き合い始めてから日本では勝っていましたが、海外で成績を残していないので、向こうも気にしていた。ようやく優勝したということで、お土産ができて彼女も安心していたし、すごく喜んでくれたと思います」

※放送内容は、上のYouTubeの再生ボタンを押すとお聴きになれます。


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次のゲスト予定

10月23日(月)〜27日(金)、10月30日(月)〜11月2日(木)の2週間は、パラ馬術・宮路満英(みやじ・みつひで)選手と、コーラーの裕美子(ゆみこ)さんが夫婦で登場します。
満英選手は、1957年、鹿児島県生まれの59歳。10月29日に還暦を迎えます。JRAの調教助手として、海外のG1レースを勝ったシーキングザパールなど、数々の名馬の調教に携わりましたが、2005年、仕事中に脳卒中で倒れ、右半身まひなど重い後遺症が残りました。2007年にJRAを退職。その後パラ馬術を始めます。
満英選手は記憶障がいがあり、指定されたコースがよく覚えられないため、妻・裕美子さんが「コーラー」と呼ばれるガイド役を務め、声でコースを指示します。夫婦二人三脚で、昨年のリオパラリンピックにも出場。3年後の東京パラリンピックを目指しています。
インタビューも、満英選手の記憶を補うため夫婦一緒に受けられることが多く、今回は特別にお二人での出演となりました。リハビリを経て再び馬に乗ったときの喜び、夫婦で戦うことになった経緯、馬とのコミュニケーション、リオでの思い出、夫婦の絆、これからの夢…など、まるで夫婦漫才を聞いているような二人のお話を2週にわたってお楽しみください。

*11/3(金)は、祝日のため放送はお休みです。